放射線科では骨や肺などを撮影する一般撮影のほかに肝臓や膵臓などを詳しく調べるCT、乳房の撮影をするマンモグラフィ、胃や大腸をバリウムで検査する透視装置を用いて検査を行っています。
放射線と言うと「被ばく」を心配される方が多いですが、医療で使われている放射線は(ガンの放射線 治療を除き)体には影響しない線量で検査しています。また、適切な線量でよりよい画像を提供するのが私たち診療放射線技師の仕事です。
現在、様々な病気の診断にはこれらの装置を用いた検査が必要不可欠となっています。私たちは一つ一つの検査に力を入れ、病気の早期発見や正確な診断が得られるような画像を提供し、皆様の健康維持に貢献できればと思っています。
皆さんの中には、「放射線」=「被ばく」=「怖いもの・危険」 → 「放射線」=「怖いもの・危険」 という認識をもっている方が大勢いるのではないかと思います。確かに、ニュースなどで取り上げられる場合はほとんど「危険」なイメージのほうが多いですね。ですが、全ての「放射線」が「危険」なわけではありません。一口に「放射線」と言っても様々なものがあります。
医療の現場では、胸部の写真を撮るのに使うX線、ガンの治療に使う放射線、核医学検査に使う放射性同位元素から出る放射線などがあります。医療以外では、原子力発電所、空港での手荷物検査、造船所などでは目に見えないヒビや亀裂が無いか調べる非破壊検査。遺跡調査などでも年代を調べるのに使われています。そして、ニュースに出てくる核兵器や劣化ウラン弾などがありますね。
ところで、皆さんは病院や空港、原子力発電所などに行かなければ全然「放射線」に「被ばく」しないと思っていますか実は、地球上の全ての人々は毎日「放射線」を浴びつづけています。それは宇宙からの「放射線」、大地からの「放射線」です。宇宙からの「放射線」は大気によって減弱し、地表では約0.6mSv/年です。標高が上がると多くなり、ジャンボジェット機の飛ぶ上空1万mの高さでは地表の百倍近くになります。(しかし、飛行機に乗って1万m上空にいる時間は短く(1年も飛んでないですよね)、飛行機自体によって遮蔽されるため人体に影響はありません。)大地からの「放射線」の場合、地域によってその量は異なりますが、火山灰の多い関東よりもウランなどを含んだ花崗岩が多い関西のほうが若干その量は多くなります。また、皆さんは温泉好きですか?この温泉からも「放射線」は出ています。ラドン温泉・ラジウム温泉などこれらはそれぞれラドン・ラジウムという放射性物質が含まれているのです。これらの「放射線」(自然放射線といいます)からの「被ばく」は、約2.4mSv/年といわれています。
では「放射線」を浴びるとどういう影響があるのでしょうか。放射線による影響は「確率的影響」と「確定的影響」の二つに分けられます。「確率的影響」はその影響の発生に決まった値がありません。多く浴びるほど発生する確率が増えます。(宝くじみたいなものです。いっぱい買えば当たる確立が増えますが、いっぱい買ってもひとつも当たらないことだってあります。)主なものは発ガン、白血病遺伝的影響などです。「確定的影響」は影響の程度が浴びた「放射線」の量の増加とともに増し、およその値(閾値)が決まっています。主なものは不妊、白内障などがあります。
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確率的影響
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確定的影響(閾値)
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では、実際の検査ではどの程度「被ばく」しているのでしょうか。
※(X線・γ線では1Gy=1Svとなります。)
大体、一回の検査あたりこれ位の「被ばく」があります。
上にある確定的影響の閾値と比較すると、とても少ないですね。次に確率的影響ですが、白血病の場合放射線「被ばく」により増加が認められるのは200mSvからと言われています。(広島・長崎の原爆被ばく者の疫学調査などによって明らかにされています。)それと比べると、とても少ないですね。ですから、検査で使用している放射線の量くらいでは、確率的影響も確定的影響も起こることはまずありません。安心してください。
ではなぜ、妊娠中の撮影を制限しているのかというと、胎児の影響で奇形の発生は100mSvですが、妊娠初期に50mSvの「被ばく」をすると、着床している胚が死んでしまうといわれているので、極力避けるようにしています。(母体のためにどうしても必要な場合は、プロテクターで遮蔽したりして検査します。)
私たち診療放射線技師は、体にほとんど影響しない線量の小さな「被ばく」でも、極力余計な「被ばく」が無いよう気をつけ、患者さんの病気の発見と健康のために有益な画像が得られるように努めています。なにかわからない事や気になることがありましたら、お気軽にお尋ねください。